本好き鳥の読書で羽ばたけ!

面白い本、仕事の悩み等を解決する本を探してるという方々に教えたい本を徒然なるまま紹介するブログです。読書で世界観を広げられたらと思っています。

うしろめたさの人類学(松村圭一郎)

今日は、文化人類学者の松村圭一郎さんの”うしろめたさの人類学”について紹介…というかもはや感想です。

自分の思考・行動に対して、冷静に自覚的になった方がいいよね。その方が振り回されず自分自身の軸を持てそうだね。としみじみ感じた本です。
個人的な思いとしては、どんなふうに世の中もっと楽しく、爽快になるかな?と考える材料にもなりました。

早速、本からの抜粋にはなるのですが、もし次のようなとき
皆さんだったらどうしますか?
 ⇒ 物乞いにお金を求められる(貧乏な国で貧乏な人に今の経済状態の自分に対して)

日本ではなかなか見られない光景ですけど‥なんかこう、、、渡すのためらう可能性ってありませんか?

著者によると、日本人は、なかなかお金を渡せないらしいです

でも、、、なんで??
自分の方がお金もあるし物乞いの求めるお金の金額は大したこともないのに…

著者によると、『 経済 / 非経済 』という決まりに忠実ゆえだからだとか。

〇ここでの経済とは

思いやりのような感情を差し引いた『合理的』なもの、『交換・ギブ&テイクを求める』ものをイメージするとよさそうです。
場合によっては、『冷たい・ドライ』を想起するかもしれないですね。

〇それに対して非経済とは
『思いやり』、『人情味』、分け与える『贈与』、多くの場合は、『あったかい優しい』感じです。


さて『 経済 / 非経済 』という決まりに忠実とは…どういうことか。

1.日本人は、思いやりや感情が大切になる場合は、経済的な行為に該当する”お金”ではなく
”贈り物”を渡さなければならないと考えがちなのかもしれないと著者は言います。

2.さらに、”お金”には交換を想起させる働きがあるから、何か代わりにもらえないのにお金を払う必要はないと思ってしまう。
※ちなみにエチオピア人はサクッと小銭を物乞いに渡しているらしい(私たち日本人のほうがお金は持ってるだろうけど)

日本社会では、経済的な意味をもつ交換が幅を利かせています。
感情を消耗することもあり、時に厄介になる贈与が回避されている状況があるようです
しかし、、、この交換は、人間の大切な能力を覆い隠してしまうと著者は言います。

つまり思いやりを抑制する、うしろめたいって一瞬感じたことを論理で固めて、大丈夫だよと正当化してしまう交換という考え・・・少し寂しい
ちょっとしたことでもしかしたら、助けられるかもしれないのに、暗黙のルールにしばられてしまうんですね。
(物乞いにお金渡すことが本当の救いかどうかとか、一人一人渡してたらキリがないの議論はここでは階層が違うので避けます…)

じゃあ、抑制されないようにして、湧き上がる感情に従ってもいいじゃないか?と瞬間的に思うけど、ここが難しい時もありそう。
合理的にいかないとうまくいかない場面があるのも、それはそれで感覚的にわかりますよね。
感情に絡むものすべてが心地よいものではないですしね。

好き嫌いで判断して、部下の扱いころころ変えたり、今日は気分が良い悪いで意思決定してる上司を信頼しますか?
もっと合理的にいってほしくないですか?

またまたここで逆に、時に厳しく合理的にドライなジャッジをする人を見て、あいつは冷たいやつだ!みたいなことを言うことさえある。
感情も論理も善し悪しつけ難いですね。

これはすごく俗世的な例でいきましたけど、
感情のせいで理不尽になったこと、論理的すぎて不愉快なことて、世の中にもいっぱいあると思うんですよね。

結局、合理や感情のどちらか片方を盲目的に批判する事では何も変わらないと思います
何か片方を批判して、もう片方を極端に支持しても、実際は、それらは実はつながっていると思います

そういうふうに知らず知らずのうちに
自分にとって都合のいいものを正当化している現実から目をそらしてしまっていることを自覚することから始めよう
ということをこの本は訴えかけてくれます。めちゃくちゃ難しいけど。。。

著者が知性について、こんなことを書いていました。引用します

自分が依拠していた概念すらもさらりと乗り越える。
理解したと思った地点にとどまらず、さらにあらたな「ずれ」を見いだしていく。
この姿勢こそが知性だ。

『経済的・合理的・ドライな感じ』ということと『非経済・人情味・感情・やさしい』ということの
境界線をうまく理解すること、確かに境界はあるけど、実は互いに密接に関連しているんじゃないのか?ということを少し冷静な視点で身の回りだけでなく、、
『自分』を見つめてみてはどうでしょうか。

冷静になると、うしろめたい気持ちに気付けるかも。。?
そうすれば自分の軸っていうのも、バランスよく築いていけるような気がしました。


うしろめたさの人類学

うしろめたさの人類学

  • 作者:松村圭一郎
  • 発売日: 2017/09/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)